アメリカでは今、電子タバコ(VAPE)が原因で死亡者が続々と増えているということが社会問題となり、早急に対策が進められています。
リキッドによって様々なフレーバーが楽しめ、ニコチン・タールフリーのリキッドなら禁煙にも繋がるということで今大注目の電子タバコ。
また、それに対するアメリカ政府による対処法として、今どのようなことが進められているのかというお話もお伝えしていきます。
アメリカで電子タバコ(VAPE)が原因で死亡したケース・状況など
2019年10月末の時点で、アメリカ国内では、電子タバコが原因で39人の死亡者が出ていると公式に発表されています。
Thirty-nine deaths have been confirmed in 24 states and the District of Columbia (as of November 5, 2019).
(24の州とコロンビアで34人の死亡が確認されています。2019年11月5日時点)
それぞれのアメリカでの報道を元に、分析してまとめました。
ニコチンや薬物成分を摂取していた
日本ではニコチン入りリキッドカードリッジの販売は禁止されていますが、アメリカでは流通しています。
アメリカで初めて報告された死亡例では、その成人男性は電子タバコでニコチンを摂取していたそうです。
また、第二のケースの場合、死亡者の中年男性は気化した大麻成分を電子タバコで摂取していたとのこと。
THCと呼ばれる大麻成分が、電子タバコを利用して摂取されるということは、アメリカの一部の州では合法であることもあって少なくないようです。
実際にも、肺疾患で緊急搬送された患者の多くは、THCを電子タバコで蒸気吸入したということを認めていると報じられています。
ニコチンやこれらの薬物成分を、電子タバコを介して吸入することが死に繋がるという因果関係ははっきりしていません。
しかし、少なくとも死亡者や重篤患者のほとんどに関しては、そういった依存性の強い成分を摂取していたという共通点があることは明らかです。
死亡者は中年男性が多い
アメリカでは、若者を中心に電子タバコが急速に広がっていることを問題視しています。
実際に、電子タバコが原因とされる呼吸困難、嘔吐、胸の痛みなどで緊急搬送された患者は10代後半の若者が多いと発表されています。
その一方で、現時点で報道されている死亡者は中年男性が圧倒的な割合を占めています。
10月末の時点で、電子タバコが原因での死者の中間値は53歳と公表されています。
最年少は17歳、最年長は75歳とされている中でこの数値が割り出されているということは、やはり死に至るケースは中年層が多いという傾向を無視することができません。
さらに、性別が公表されている死者はいずれも男性。
電子タバコの利用者の男女比や、性別による電子タバコの使い方の違いも考えられるため、性別そのものが死因になり得るとは断定できません。
しかし、あくまで実例としてこのようなデータが確認されています。
いずれも死因は呼吸器系疾患
これまでの電子タバコが原因とされている死亡者は、いずれも呼吸器系疾患の発症が直接の死因であるとして発表されています。
具体的に電子タバコがどのように肺や呼吸器に悪影響を及ぼすのかということについては目下調査中ではありますが、因果関係が深いということは確かな模様。
アメリカでの死亡例や重篤な症例の中には、偽造品や闇取引で手に入れた電子タバコのリキッドカートリッジを使用していたというケースも散見されるそうです。
非正規のカードリッジは含まれている成分が明らかにされていないものも多いですし、どんな成分が調合されているのかは消費者側で判断することができません。
また、消費者が自分たちの手でリキッドを調合・添加してカードリッジに詰めて吸引しているという事例も多いため、一般に流通されている電子タバコ自体に問題があるかどうかということすら明確に断定できないのです。
電子タバコのリキッドを気化させて吸引するというスタイルに問題があるのか、その成分の摂取に問題があるのか。
今のところ確証が持てる研究結果は明らかにされていませんが、電子タバコの使用には呼吸器系疾患による死亡リスクがあるということだけは確かです。
電子タバコの爆発による死亡事例も
電子タバコは、呼吸器系疾患による死亡の他に、爆発による死亡事故の実例も出ています。
その多くは、バッテリーの問題に起因するものであると発表されています。
電子タバコのバッテリーとして用いられているのはリチウムイオン電池。
通常の使用で不具合が起こる可能性は高くありませんが、改造が施された場合負荷がかかって引火する危険性があります。
また、質の悪い充電器を使うことも、バッテリーに負荷がかかり爆発の原因となることが指摘されています。
いずれにせよ、正規品を正しい使い方で使用しなければならないということですね。
電子タバコは口で吸引するために使用するもの。
爆発が起きてしまえば、頭部に深刻なダメージを与えます。
あるケースでは、爆発した電子タバコの破片が貫通し、頸動脈に刺さったことが死因となりました。
アメリカの政府による対処法は?
急速に死亡者が続出することで、深刻な社会問題となりつつある電子タバコ。
ここでは、アメリカ政府が具体的にどういった対処法を取っているのかということについてご紹介をしていきます。
非正規品の調査
アメリカ政府は、特に無許可で販売されている非正規品に問題があると睨んでいます。
While I like the Vaping alternative to Cigarettes, we need to make sure this alternative is SAFE for ALL! Let’s get counterfeits off the market, and keep young children from Vaping!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2019年9月13日
私はタバコに代わる「VAPE」が好きだが、全て安全なものであるかどうか確認する必要があると考えている。偽造品を市場から排除して、幼い子供を守ろう!
実際のところ電子タバコによる深刻な健康被害の原因は明らかにはなっていませんが、非正規品が闇取引によって流通しているのは少なくとも改善していかなければなりません。
また、アメリカ政府によると、非正規品の説明文に誤った表記がされており、それが健康被害の原因となっているのではと疑っているようです。
電子タバコが人体に悪影響を及ぼし、時には死に至らしめるメカニズムは判明していないものの、アメリカ政府の注意喚起を受けて各電子タバコメーカーが自主規制を始めているのに対し、非正規品や消費者自身による改造などについては野放しとなっていることが現状です。
したがって、規制を強めるだけでなく、早急に非正規品の調査を行ったうえで健康被害の原因究明をしていかなければならないのです。
一般機関の調査ではありますが、非正規品のカートリッジの多くに農薬が検出されたとの報告があります。
政府機関による一刻も早い調査と対応が望まれます。
フレーバーの規制
アメリカ政府は2019年9月11日に、フレーバー付き電子タバコの禁止を推進するということを発表しました。
電子タバコが若者を中心に広く普及された理由が、タバコ本来の風味以外にも様々な甘いフレーバーを味わえる点にあるとし、その事態を重く見ての対処法です。
州単位ではそれに先立ち、続々とフレーバー付き電子タバコの規制を実施し始めています。
ミシガン州では、既にフレーバー付き電子タバコの販売を禁止しており、次いでニューヨーク州でも緊急規制が発令されました。
そういった世情や批判を受けて、電子タバコメーカー側もフレーバー付き商品の自主規制を始めました。
アメリカの大手電子タバコメーカーであるJUUL(ジュール)は、国内での一部フレーバー付き電子タバコの販売を終了することを決定。
販売終了の対象となるのはマンゴー、キュウリ、フルーツ、クリームの4種類です。
販売を継続するフレーバーもあるため、この措置については賛否のわかれるところです。
ただ、若者が電子タバコに興味を持たないように対処法を打ち出す動きが官民双方で進んでいるということは確かです。
一部フレーバーは規制せず
若者の関心を惹く甘いフレーバーを規制する表明を出したアメリカ政府。
とはいえ、この規制についてはいまだ検討中とされており、どの程度フレーバーが制限されるのかは決まっていません。
一部報道によると、ミントとメントールフレーバーに限っては規制しないことを、アメリカ政府が検討していると言われています。
ミントとメントールフレーバーは人気が高く、電子タバコ支持派もこれらの一部フレーバーを規制しないよう訴えかけています。
子供の興味を惹かないフレーバーなら問題はないとの建前なのでしょうが、若い消費者はメーカーの自主規制を受けてミントフレーバーにシフトしたとの意見も。
2020年に大統領選を控えたトランプ政権ですが、電子タバコの規制を厳しくすることによって、得票率に支障があることを危惧しているのではないかとささやかれています。